ココアという色に、目が留まりました。
ベージュより少しだけ深く、ブラウンと呼ぶにはやわらかい。その色をまとったブラパッドキャミソールが、Souple Luzとの最初の出会いです。素材のことも、ブランドの成り立ちも、まだ何も知らないころでした。
初めて身につけた日のことは、いまもよく覚えています。肌に触れているのに、触れている感じがしない。気づけば毎朝それを手に取るようになり、色違いを買い足し、やがてブランドに直接連絡をしていました。この心地よさが、どこから来るのかを知りたくて。
それから、10年近くが経ちます。
しなやかさと、光と

Souple Luz(スープレルース)。フランス語で「しなやかさ」を意味するSoupleに、ポルトガル語で「光」を意味するLuzを重ねた名前です。
ブランドが掲げるのは、上品であること、肌触りがよいこと、環境に配慮すること、そしてつくり手の顔が見えること。どれかひとつを選ぶのではなく、四つを同時に手放さない。言葉にすれば簡単ですが、それを形にし続けているブランドは、そう多くありません。
世界の綿の、わずか2.9%

オーガニックコットンは、世界で生産される綿のうち、約2.9%にすぎません。繊維業界の国際NGO、Textile Exchangeの報告(2025年)によれば、2023/24年度の生産量は約70.6万トン。綿花全体の約2,411万トンからすれば、ほんのひと握りです。
米国の有機基準では、収穫の少なくとも3年前から、禁止された物質を使っていない畑で育てることが求められます。化学肥料も、遺伝子組み換えも使えません。米国農務省によれば、2025年に米国で収穫されたオーガニックコットンは57,802俵。その主な産地のひとつが、ニューメキシコ州です。
Souple Luzのキャミソールやショーツ、トップスに使われているのは、そのニューメキシコ州のアルバレス農場で育てられた、オーガニックスーピマコットン。ふっくらとやわらかく、しなやかな風合いをもつ綿です。綿花が完熟するまで、通常よりおよそひと月長く待ってから摘み取るのだといいます。
毎日、いちばん長く肌に触れているのはインナーです。だからこそ、どんな土で、どんなふうに育った綿なのかまで知っていたい。私がオーガニックコットンをすすめる理由は、そこにあります。
服を一着つくるたびに、原材料の調達から製造までで約25.5kgのCO2が排出され、約2,300リットルの水が使われると、環境省は伝えています。何でできているかを選び、選んだものを長く着る。その積み重ねは、決して小さくないはずです。
混ぜない、足さない

Souple Luzは、品種の異なる綿をブレンドしません。ひとつの品種だけで糸を紡ぎ、その綿が本来もつ表情を生かします。
糸にシルケット加工(綿に光沢を与える加工)は施さず、生地にもポリウレタンなどのストレッチ糸を入れない。ブラパッドキャミソールの身生地は、コットン100%です。コットンシルクリブやコットンカシミヤリブのアイテムでは、このスーピマにシルクやカシミヤを重ねています。
何かを足して心地よくするのではなく、素材そのものの力を引き出す。その潔さが、着たときの静かな心地よさにつながっています。洗うたびに肌になじんでいくのも、この綿ならではだと感じます。
丸く編むということ

伸びる糸を使わないのに、なぜ身体に沿うのか。その答えは、編み方にあります。
Souple Luzの生地は、筒状に編み立てる丸編み。サイズごとに編み機を替えて仕立てるため、キャミソールの脇には縫い代がありません。縫い目が肌に当たらず、編み地そのものの伸びが、身体の動きにそっと寄り添います。
食事のあとも、移動の長い旅の日も、窮屈さを覚えることがない。身体を整えるより、身体に従ってくれるものを。年齢を重ねてそう思うようになった私に、この着心地はしっくりと馴染みます。
日本の手を経て

綿花は、日本ではほとんど栽培されていません。Souple Luzは原綿を海外から迎え、そこから先の紡績、生地づくり、縫製を、すべて日本で行っています。
どの畑で育ち、どこで糸になり、誰の手で縫われたのか。それをたどれることは、品質への信頼であり、日本のつくり手とともに歩むことでもあります。
細い肩紐の、ほのかな艶

オーガニックコットンのインナーに、素朴な印象を抱く方もいるかもしれません。Souple Luzに惹かれたのは、その先入観を静かに覆す佇まいでした。
たとえば、肩紐。ごく細く、ほのかな艶をたたえています。シャツの襟元からのぞいても下着の気配がなく、装いの一部としてすっと馴染む。胸元のラインも、強調するのではなく、女性らしさをさりげなく引き立てるだけ。ブラパッドが付いているので、一枚で過不足なく装えます。

色は、ココア、ホワイト、ブラック、ネイビー。最初に惹かれたココアは、肌の色に寄り添いながら、どこか凛とした品をもつ色です。淡い色の服の下にも響かず、私のワードローブにはいまも欠かせません。
定番の色に加えて、春夏と秋冬の年に二度、シーズンカラーが届くこともあります。型は定番と同じまま、ボタニカルダイ(植物染め)で色をのせたもの。植物の色で染めるため、数には限りがあります。その季節にしか出会えない色を待つのも、このブランドを長く愛する楽しみのひとつです。
長く着るものの、本当の価値

ブラパッドキャミソールは14,300円。インナーとして、決して手軽な価格ではありません。
けれど、世界の綿のわずか2.9%のオーガニックコットンのなかから、農場までたどれる単一品種を選び、日本で糸から仕立てる。ブラジャーとキャミソール、二枚分の役割を一枚が担い、家でも、街でも、旅先でも着られる。そう考えると、この価格には確かな理由があると思えます。
10年近く、色を変えながら着続けてきたことが、何よりの答えかもしれません。
素肌に、いちばん近い選択

肌に触れるものは、心地よく。身につけるものは、美しく。そして、選ぶものの背景にまで、目を向けていたい。
Souple Luzは、そんな毎日の小さな選択を、少しだけ丁寧にしてくれる一枚です。はじめての方には、まずブラパッドキャミソールを。お気に入りの色を一枚、暮らしのなかで確かめてみてください。
※出典:Textile Exchange「Materials Market Report 2025」(2025年9月)、米国農務省「Organic Cotton Market Summary」(2026年8月)、環境省「サステナブルファッション」。ブランド情報はSouple Luz公式サイトより。